德薙零己の読書記録

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伊藤毅著「ルールの世界史」(日本経済新聞出版)

ルールの世界史 (日本経済新聞出版)

Jリーグディビジョン3に所属するFC大坂は、東大阪市にある花園ラグビー場をホームスタジアムとしている。

こう聞くと疑問に感じる人もいるのではないであろうか?

花園ラグビー場は文字通りラグビー場である。そして、FC大阪はサッカーJリーグのクラブである。それがどうしてサッカー場ではなくラグビー場をホームスタジアムとするのか?

結論から言うと問題ない。花園ラグビー場ラグビーのために作られたスタジアムであることは事実であるが、ラグビーしか開催できないスタジアムではない。ラグビーだけでなくサッカーも開催できるスタジアムなのである。

もともと、サッカーとラグビーは同じスポーツであった。それが、ボールを手で扱って良いとするか不可とするか、ボールの形をいかにするかといった点で意見が分かれ、サッカーはサッカーのルールを、ラグビーラグビーのルールを整備させることで別々のスポーツとなっていった。それでももとは同じスポーツであったことの残滓が今も数多く残る。そのうちの一つがスタジアムの大きさ、すなわち、サッカーのために建てられたスタジアムはラグビーを開催できるし、ラグビーのために建てられたスタジアムはサッカーが可能なのである。無論、埼玉スタジアムのようにサッカーしか開催できないスタジアムもあるが、花園とは逆にサッカーを前提として建設されたスタジアムであっても、仙台、磐田、博多といったスタジアムではサッカーとラグビーの両方が開催できるようになっている。

前述のサッカーとラグビーはスポーツに関するルール制定であるが、こうしたルールの制定は、スポーツの未来を制定するだけでなく、新たな社会を構築することもある。我々の暮らしの中に存在するルールの一つ一つに原因があり、問題解決のための手段としてのルール制定がある。ついでに言うと、失礼クリエイターのように、自分では守らなくていい、あるいは自分なら簡単に守ることできるルールを決めて他人に押しつけるのは快楽ですらある。守らされる側は苦痛でしかないが。

たとえば株取引に目を向けると、これはこれで様々なルールが課せられている。ルールを守っている間は特に何ら問題ないし、多額の資産を手にすることも不可能ではなくなるが、破ろうものなら容赦ない処罰が待っている。SNS等を見ると風説の流布としかいえない内容の書き込みがあるが、それは本来であれば逮捕される案件であり、まだ逮捕されていないだけである。どうしてこのようなルールができたのかを突き詰めていくと、チューリップバブルがあり、南海泡沫事件があり、そして世界恐慌が存在している。歴史を学べばそれらがどのような結末をもたらしたかを理解できるであろうし、ルールが存在することの理由も理解できるはずである。

ルールには歴史がつきまとう。ルールの起源を辿っていくとそのルールが制定された理由、そして、そのルールを制定せざるをえなくなった社会の情景が浮かび上がる。