德薙零己の読書記録

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矢吹晋著「文化大革命」(講談社現代新書)

文化大革命とは何であったか? それは、本書の「結びに代えて」のこの一文に集約できる。

反革命分子のために銃弾を一発用いたので、家族は一発分の代金0.05元を支払うべし」

難癖を付けて銃殺しておいて、この仕打ちだ。


本書「文化大革命」は、6月4日の天安門事件の記憶もまだ新しい、1989年10月に刊行された書籍である。現在よりも文化大革命を実体験した人はまだまだ多い一方、その暗部について知られることはまだ多くなかった時代に記された一冊であり、文化大革命とは何であったかを知るのに適切な入門書でもある。

著者は本書を記すにあたって、毛沢東の夢と現実を検証すると同時に、文化大革命の真相を具体的かつ実証的に抉り出している。特に、現代中国に大きな傷痕を残した出来事について、その意味と事実経過を辿ることで、その苦難の内容を解明している。

文化大革命には様々なスローガンが登場している。「造反有理」しかり、「批林批孔」しかり。これらのスローガンのもとで中国大陸はどのような混乱を生みだしたか、そして、この混乱を利用して「四人組」はどのように権力を握り、そして破滅していったかを本書は詳細に説明している。これらの説明により、文化大革命がどのように進行し、その結果として何が起こったのかを理解することができる。

この本は、文化大革命についての深い理解を得るための重要な一冊である。