古代の日本は中央集権国家であった。平安京遷都後もしばらくは古代日本の中央集権国家であろうとし続けていた。
しかし、現実に即さぬ中央集権国家の存続は無謀であった。律令制の200年間に全国的な飢饉が6回発生し、平治の農業生産性も132%、すなわち、100名が農地で働いて得られる収穫が132名分という、余裕の乏しい社会であった。
摂関期はこうした社会からの脱却、院政期は摂関期に社会問題となった格差解消に向けての社会施策であったと言える。そして、社会は中央集権から地方分権へと進み、中央は皇室を中心として権威が持つ者の権力はなく、地方は権力を手にしているものの権威を持たぬため、中央は地方の権力を利用し、地方は皇室を中心とする中央の権威と利用するという構図が作られていく。
本書はその過程における、政治、経済、社会の移り変わりに関して発表された様々な論文を整理し、一冊にまとめて刊行した一冊である。以下に本書の目次と各論文の著者をまとめたので、この目次を見ただけでも新進気鋭の研究者達が最新の研究を網羅している書籍であることを御理解いただけるであろう。
総論 | 有富純也・佐藤雄基 | |
第1部 社会・国家の変化 | ||
第1章・平安中後期の国家財政 | 神戸航介 | |
第2章・古代の集落は消滅したのか | 有富純也 | |
第3章・荘園制成立史研究と摂関期の荘園研究 | 手嶋大侑 | |
第4章・「本所法」とは何だったのか―院政期と鎌倉期とのあいだ | 佐藤雄基 | |
第5章・治承・寿永の内乱から生まれた鎌倉幕府―その謙抑性の起源 | 木下竜馬 | |
第2部 東アジアと政治文化 | ||
第6章・摂関・院政期仏教と東アジア | 手島崇裕 | |
第7章・「国風文化」はいかに論じられてきたか | 小塩 慶 | |
第8章・天皇の二面性とその分化明確化過程 | 井上正望 | |
第3部 貴族社会と新たな身分 | ||
第9章・摂関家はいかなる権力であるか―院政期の「権門」と「家」 | 海上貴彦 | |
第10章・摂関・院政期の女房と女官―階層秩序を中心に | 岡島陽子 | |
第11章・技能官人編成試論―「官司請負制」以後 | 鈴木 蒼 | |
第12章・武士成立史研究の成果と課題 | 藤田佳希 | |
第13章・中世的身分のはじまり―種姓観念と家格 | 金 玄耿 |