德薙零己の読書記録

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イングランド銀行&ルパル・パテル&ジャック・ミーニング著,村井章子訳「イングランド銀行公式 経済がよくわかる10章」(すばる舎)

前もって記しておく。本日の記事の著者名は書き間違いではない。本当にイングランド銀行が著した著作の邦訳である。実際にはイングランド銀行エコノミストであるルパル・パテル氏とジャック・ミーニング氏が著した著作であるが、イングランド銀行を著者名として刊行した書籍である。

書名からも著者名からも想像できると思うが、本書はイングランド銀行がイギリス国民向けに経済を説明することを前提として記した本であり、英国の公立校の図書館に配布されたという実績も持っている。本書の対象とする読者も高校生以上であり、実際の内容も高校生ならば、あるいは、高校時代の自分を思い出すならば、その時代の自分を思い出しながら、本書の掲げるテーマと解説を理解いただけるであろう。

その上で、このことを思い浮かべていただきたい。以下に記すのは本書の目次である。英国では以下に記してあることを学んだ状態で社会に出てくるのだということを。

 

GDPとは何か、独占のもたらす害悪とあえて放置すべき独占とは何か、中央銀行金利政策とは何か、極論すれば以上のことを学ばなくても卒業できるのが日本の教育制度である。高校入試で取り上げられることは滅多になく、大学入試でも社会科を入試で必要とし、かつ、社会科の入試科目に政治経済を選ばない限り問われることも少ない。大学で経済学を専攻している人ならばかなりの可能性で学ぶが、そうでなければ一般教養の科目で経済学を選んだのでない限り学ぶことはない。

つまり、自分で学ぶか社会人として学ばざるを得ない状況に追い込まれたかのどちらかでないと、英国の高校生が学んでいる経済学の知識を、日本の社会人は身につけていなくてもおかしくないのだ。

という前提で社会人生活を送るのである。

……、勝てるのか?

もうグローバル社会は成立した。抜け出すことはできない。

はっきり言うと、書いてある内容はビジネスパーソンにとって必須の知識であり常識の範囲内であるが、だからといって誰もがその知識を身につけているとは言い切れない。相手が明らかに経済の知識を身につけていないために話が通じないことは何度も体験してきたし、本書を読んで私も知らないのだと痛感することも多かった。

国境を越えたら、誰もがこの知識を身につけている社会が広がっているのだ。