德薙零己の読書記録

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五十嵐律人&多田玲子著「現役弁護士作家がネコと解説 にゃんこ刑法」(講談社)

本書は現役の弁護士である五十嵐律人氏と、ベストセラー『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』のイラストを担当したことでも著名な多田玲子氏の共著である、刑法の解説書である。

弁護士の著した刑法の解説書と聞くと難しそうだと身構えてしまいそうであるし、実際に取り上げている内容は、罪刑法定主義、因果関係、間接正犯、不作為犯、未必の故意、過失、正当防衛、緊急避難、被害者の承諾、真実の錯誤、原因において自由な行為、不能犯、中止犯、共謀共同正犯、教唆犯、幇助犯、刑罰の種類など、刑法の主要な概念の解説なのであるから用語だけで身構えてしまいそうである。

ところが、いざ本を開いてみるとその感情は一掃される。多田玲子氏のわかりやすいイラストに加え、弁護士であると同時に小説家でもある五十嵐律人氏の明快な解説、そして、一つ一つのテーマが簡潔にまとめられていることもあって、極めて読みやすい内容になっている。

私は既に文学部史学科を卒業した身であり、経営学にも身を置きつつ、ITエンジニアとして長年生きている者であるが、本書を仮に中学生や高校生が読むとすれば、将来の進路に法学部を、将来の社会人生活での生き方に法曹関係を選ぶケースが増えるであろう。本音を言えば歴史や経営、あるいはITエンジニアリングに進む者が増えて欲しいところであるが、本書の前に太刀打ちできる自信は、ない。それほどまでにこの本は面白く、読みやすく、わかりやすい。