德薙零己の読書記録

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グレン・ハバード&ティム・ケイン著,久保恵美子訳「なぜ大国は衰退するのか:古代ローマから現代まで」(日本経済新聞出版)

人類はその歴史に於いて様々な国家の興隆を体験した。

国家が興隆した理由は国の数だけ、興隆の数だけ存在する。

人類はその歴史に於いて様々な国家の衰退を体験した。

国家が衰退した理由はただ一つ、「変わらないこと」に集約される。

本書はグレン・ハバードとティム・ケインの両氏が、行動経済学、制度経済学、政治学をベースに、歴史上および現代の大国の興亡を読み解き、経済的不均衡が文明を崩壊させ、経済的な衰退は制度の停滞によって生み出されたこと、あるいは現在進行形で生まれていることを明らかにしている。本書で取り上げているケースは、ローマ帝国、明朝中国、スペイン帝国オスマントルコ帝国、日本、大英帝国、ユーロ圏、現代カリフォルニア州、米国におよんでおり、それぞれの成功と発展の限界、そして失敗をつぶさに分析し、大国の経済力を測るこれまでにない斬新な方法を提示している画期的な一冊である。

先に衰退の理由として挙げた「変わらないこと」。世間一般でイメージされることの多い戦争での敗北は、契機の一つになることはあっても衰退の直接の原因となるわけではない。それも含めて「変わらないこと」を選んだために国家は衰退していったのである。