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リチャード・P・ルメルト著,村井章子訳「戦略の要諦」(日本経済新聞出版)

アメリカはなぜ、ベトナム戦争で失敗したのか。

コダックはなぜ、かつての隆盛を失ったのか。

世の中、成功している企業、興隆している国家は多々存在する。その一方で、失敗した企業、衰退している国家も存在する。

この違いはなぜ起こったのか?

その解の一つとなるのが、本書、「戦略の要諦」である。

以下に、本の内容の一部を記すと、

  • 戦略策定がうまくいかないのは、戦略とはあらかじめ定められた目標、とくに業績目標を実現する方法のことだ、という経営陣の思い込みにある。
  • こうした思い込みを打破し、戦略策定を専任者に任せきりにせず、行動計画を各部門責任者に丸投げしない。
  • 戦略の策定とは意思決定でも目標設定でもない。卓越した優位性も長期的ビジョンも他社との比較も要らない。
  • 「戦略の策定」とは克服可能な【最重要ポイント】を見きわめ、それを解決する方法を見つけることである。

といった点が挙げられる。

著者は、戦略というものが単なる目標設定や意思決定のプロセスではないことを強調している。その上で戦略とは、組織が直面する最重要の問題を特定し、それを解決するための方法を見つけるプロセスであるとしている。

その点を踏まえ、著者は本書に於いて、戦略策定のプロセスを再考するための貴重なガイドを提供し、戦略が組織の成功にどのように影響を与えるかを理解するための新たなフレームワークを提示している。先に挙げたベトナム戦争コダックは本書に取り上げられている具体的な事例である。本書はさらに、MBAでのケーススタディよろしく、現実の企業ではなく仮称の企業による仮称の事例を挙げている。こうしたケーススタディは多くのビジネスパーソンにとって、日々の業務に有用なガイダンスとなるであろう。