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ウィンストン・ブラック著「中世ヨーロッパ:ファクトとフィクション」(平凡社)

なろう系とか、異世界転生とか、そういった作品が多々溢れている。そうした世界観の作品は近年に始まったことではなく、少なくともルネサンスまで遡ることは可能である。そして、それらの作品の多くは中世ヨーロッパを舞台としている、あるいは、中世ヨーロッパをイメージした独自の世界とすべきか。まあ、ルネサンスから見た中世は、21世紀から見た20世紀に似たような位置づけであるから現在から見た中世と同じわけではないが。

さて、そうした中世ヨーロッパであるが、人口に膾炙されている内容を本書は否定する。中には世界史の教科書ですでに書き換わりつつあることもあるが、多くはそれまで信じていた価値観を覆すものである。

以下に本書の目次を記す。

  1. 中世は暗黒時代だった
  2. 中世の人々は地球は平らだと思っていた
  3. 農民は風呂に入ったことがなく、腐った肉を食べていた
  4. 人々は紀元千年を恐れていた
  5. 中世の戦争は馬に乗った騎士が戦っていた
  6. 中世の教会は科学を抑圧していた
  7. 一二一二年、何千人もの子どもたちが十字軍遠征に出立し、そして死んだ
  8. ヨハンナという名の女教皇がいた
  9. 中世の医学は迷信にすぎなかった
  10. 中世の人々は魔女を信じ、火あぶりにした
  11. ペスト医師のマスクと「バラのまわりを輪になって」は黒死病から生まれた

実像はいかなるものであったのかは本書を読んでいただきたいが、それまで信じていた伝承が現実の名の下に覆されるのが本書である。

なお、皮肉なことに、現実の視点で照らされた中世ヨーロッパはなろう系小説に何となく似ている。