德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

ジョセフ・ヒース&アンドルー・ポター著,栗原百代訳「反逆の神話:「反体制」はカネになる」〔新版〕(早川書房)

2009年8月末、日本は取り返しの付かない失敗をしてしまった。3年8ヶ月の太平洋戦争に匹敵する3年4ヶ月の悪夢、民主党恐慌時代である。

何でこんなものが誕生したのかを突き詰めると、他人のやることなすことに難癖を付けるだけで自分で考えることのできない無能が政権を握ったからである。他人が考え、実行することについて、自分は何の労力を果たすこと無く、無関係なところで気ままに批難していれば食べていけている人間がこの世に存在する。2009年の悪夢は難癖を付けることで食べていけている人間に権力を握らせてしまった、あのときの選挙で間違った投票をしてしまった人間の、未来永劫許されることのない失態である。

さて、本書は、何の意味も、何の価値も、何の生産も、何の功績も果たさないクズどもが、どのようにして生まれ、どのようにして生きているかという仕組みを紐解いた一冊である。資本主義とカウンターカルチャーとの間には複雑な関係があり、体制への反逆を掲げることがまさに快楽と「差異」への欲望を煽ってカネを生み出す源泉となり、かえって資本主義を肥らせていることを暴き出している。

カウンターカルチャーもまた資本主義の一部であり、カウンターカルチャー自体が商品化されている。しかも、反体制的な思想はその愚かさゆえに、反体制の思想にある者とそうでない者との間に断絶を生み、かえって体制そのものを強化するかという皮肉な現象を示している。

また、この本はルールや規制によって社会を具体的に変えることを追求するマイルストーンとなる名著でもある。体制に従うことは必ずしも正しいことではない。2009年の場合と違い、現在の体勢よりも優秀な人間の手による社会変革のための具体的な手段が必要であり、そのための手段として規制の重要性を強調している。