德薙零己の読書記録

お勧めの書籍や論文を紹介して参ります。

おじいちゃんといっしょドラッカー講座朱夏の陽炎

スティーヴン・D・レヴィット&スティーヴン・J・ダブナー著「超ヤバい経済学」(東洋経済新報社)

昨日の続編である。

テイストは前作と変わらないが、取り上げるエピソードは前作よりより毒気の強い物となっている。

たとえば、現在の日本で問題になっていることの一つに大久保公園の問題がある。それが何かは詳しくは記さないし、そもそも知らないので詳しく書けるわけないのだが、彼女たちと似たような境遇の人は昔から数多く存在していたし、現在も存在している。多くの社会が取り締まりを考え、あるときは彼女たちを、またあるときは彼女たちを買おうとする男のほうを取り締まろうとし、そして失敗してきた。その上で、本書は彼女たちがなぜそのような道を選んだのかを考察することは無い。ただただ、彼女たちはいくらで売るのか、自らを守るためにいくらを出費するのかを説いている。ただし、社会的に彼女たちが減った方法については述べている。それは法の厳格な適用でも、倫理観の向上でもなく、就職における女性差別の法的な撤廃により、それまで女性が就業することが珍しいとされてきた職業に女性が就くようになり、経済的理由での選択が減ったことである。

日本で論じられることの多い早生まれのハンデ。しかし、スポーツや芸術の世界ではむしろ、早生まれであることはメリットとなる。どういうことか? 日本国内に留まっているなら学齢によって出場できる大会に制限が設けられる。中学生は小学生向けのサッカー大会にエントリーできないし、高校生は中学生向けのピアノコンクールにエントリーできない。しかし、国際大会での年齢制限は、その年の1月1日時点の満年齢、もしくは、その年の12月31日時点の満年齢で決まる。つまり、現代日本の早生まれのハンデとは逆に、早生まれであることは他の選手より多くの練習と多くの経験、そして成長についてもポールポジションを獲得し、好成績を残る可能性が高いことを意味する。それも、このメリットは一度や二度では無い。アスリートとしてのキャリアを積み、あるいは音楽家や芸術家としてのキャリアを積み、年齢制限無しの大会に出場できるようになった頃には、各年代で国を代表する選手として全世界を渡り歩いてきた選手として大成することとなる。

前作に引き続き、本作にも多くのエピソードが載っている。そしてこちらも真新しい視点から経済を捉えるものだ。それも、情熱ではなく冷徹な思考のもとに。