タイトルを観ておわかりいただけるであろうが、本書は経済学書である。ここまでは誰もが了承する話であろうが、ここから先は、何を言っているかわからないことを書くことになる。
本書は映画の原作本である。
経済学書は一見すると映画と全く咬み合わない分野に見えるが、本書は映画の原作たるに相応しいエピソードに満ちた一冊である。
以下にそのエピソードの一端を記してみる。
[エピソード1]
1996年、イリノイ州シカゴ市教育委員会は、市内の公教育の環境向上を目的として、市内の小学3年生、小学6年生、中学2年生に学力試験を受けさせることが決まった。その成績が学校に対する評価になり、好成績の学校の教員には報奨が、成績の低い学校の教員には免職が待っているという結果になった。シカゴ市はこれで教師の淘汰と教育環境の向上が図られると期待していたが、待っていたのは教師ぐるみのイカサマだった。
[エピソード2]
大相撲は15番の取り組みである。15日目である千秋楽を終えたあとの成績で番付が上下し、番付が上がれば高い給与と好待遇が待っている一方、下がったときに待っているのは給与の削減と待遇の悪化だ。さて、7勝7敗で千秋楽を迎えたらどのような結果が待っているか? 著者は1989年の初場所から2001年の初場所の3万2000以上の取組の結果をまとめ、一方が7勝7敗、もう一方が既に勝ち越しを決めているという取組では、理論上の勝率は50%に満たないはずなのに、実際の勝率が75%を超えていることを指摘している。
[エピソード3]
1990年代のアメリカで急激に犯罪件数が減ったことが確認された。考えられる理由として銃規制の強化や麻薬販売の取り締まり強化が考えられたが、どうもそれでは違うらしいとわかった。判明したのは、中絶の合法化である。それまでの望まぬ妊娠と出産が中絶の合法化で減ったことが犯罪件数の減少であった。
その他にも本書には多くのエピソードが載っている。そのどれもが真新しい視点から経済を捉えるものだ。
映画から本書を知った方もいるだろうが、そのような方にも本書はおすすめである。映画でわかりやすく、しかし時間の制約から詳しくは説明できなかったことを、本書は詳しく書き記してくれている。