德薙零己の読書記録

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橘木俊詔著「ポピュリズムと経済:グローバリズム、格差、民主主義をめぐる世界的問題」(ナカニシヤ出版)

ミもフタもない言い方になるが、自分はポピュリズムと関係ないと考えている人が、もっともポピュリズムに染まりやすい。

自分は、平安時代歴史小説で全部書くというコンセプトのもと、平安時代叢書と題する歴史小説を書いている。これは現在進行形である。
その中で、鳥羽院政期の鳥羽上皇(1141年からは鳥羽法皇)の政治を調べているが、これまでずっとピンと来ないでいた。
この本を読んで一つの思いを抱いた。
鳥羽院政をポピュリズムと考えると色々と納得がいくのだと。

院政というのは国法の規定に基づく組織ではない。法に基づけば退位後の天皇の暮らしを支える経済基盤と事務基盤のみが明記され、上皇法皇は何ら権力を有さないはずであった。しかし、誰が天皇の実の父、実の祖父、実の曾祖父の言葉を無視できようか。上皇法皇の言葉は単なる意見表明ではなく事実上の意思決定となったのだ。

そして、鳥羽院政が如実であるが、白河院政も、後白河院政も、突き詰めるとポピュリズムなのだ。

本書では、ポピュリズムとは何か、どのような特徴やタイプがあるか、どのような要因や影響があるかなどを概観した後、グローバリズムとの関係、格差との関係、民主主義との関係について詳しく考察している。また、ポピュリズムの対策や対処法についても提言しており、さまざまな国や地域の事例やデータを用いながら、ポピュリズムの本質や問題点を明らかにしている。

本書の副題にもあるとおり、本書は元来、現代社会におけるポピュリズムと経済についての関連性を述べた本である。しかし、本書で学んだ考えは歴史においても適用可能である。鳥羽院政のように。