室町時代の領主が農家の手伝いを募集したときの記録がある。
用意した報酬は、田植えが1人30文、草刈りが1人15文。なお、草刈りは夏の暑いさなかということもあって、拘束時間は田植えの半分である。
ちなみに、この時代の一般庶民の日給は10文なので、3倍の給与を半分の拘束時間で手にできるのである。
本書は日本国の経済史のうち、摂関制最盛期から織豊時代までの経済の移り変わりを、GDPや物価などの数値を用いて分析する書籍であり、経済というものが近現代だけの独自のものではなく、古代から現在まで連綿と続いていることを示している。特にGDPを推測しなおしていることは、同時代の執政者に対する再評価の材料となるであろう。
冒頭に記した室町時代の人員募集の記録も現在でも見られる構図である。もっとも、現在のようなケチくささはなく、はっきりと報酬を用意した上での人員募集である点を踏まえると、現在よりも優れた経済感覚が存在していたとも言えよう。