德薙零己の読書記録

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リチャード・フロリダ著,井口典夫訳「新・クリエイティブ資本論:才能が経済と都市の主役となる」(ダイヤモンド社)

新 クリエイティブ資本論

トマ・ピケティの「21世紀の資本」が既存の資産保有者に対する負担を求めるのに対し、こちらは現時点で資産を持たない人が資産を手にするにはどうするかを記している。

持てる者から奪うだけが格差是正の方法ではない。持たざる者が持てる者になる環境を用意することもまた格差是正であり、血を流すことなく、何一つ奪うことなく、格差を無くし、社会全体を豊かにするための手順書という視点で「新クリエイティブ資本論」を評価すべきであろう。

豊かになるためには新しいモノやサービスを生み出す環境を用意することが必要だとリチャード・フロリダ氏は記す。そして、その指標は新しい存在を受け入れるかどうかで決まるとも。最もわかりやすいのはその環境がいかなる差別を有しているか。無論、差別のない場所であればあるほどより優れている。

面白いのは、同性愛者を受け入れる場所であるかどうかが一つの指標になるという点である。同性愛というのはどこでも差別の対象となりやすい。それを受け入れる環境は間違いなく差別の少ない環境である。そうした環境は新たなモノやサービスが生まれ、地域全体が豊かになると記している。

同性愛差別だけでなく、オタク差別、人種差別、国籍による差別、年齢、性別、新参者であるかどうか、こうした差別意識を持つ人が多く住む場所は衰退に向かう。自分の住んでいる場所に差別などないと考えるなら、批判者の多い場所かを考えてみるといい。批判の裏には差別がある。

何かをしようとしている人に対してダメ出しをする人は、だいたいが差別感情の強い人であり、新しい何かを受け入れる意識の乏しい人である。そういう人が多く住む場所は豊かさと遠い暮らしの地域になる。これは国全体ではなく、市町村の単位でもなく、町内会単位で考えるべきことと言えよう。