德薙零己の読書記録

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池上俊一著「フィレンツェ:比類なき文化都市の歴史」(岩波新書)

フィレンツェ-比類なき文化都市の歴史 (岩波新書)

埼玉スタジアムや国立競技場に5万人以上の人が詰めかけた光景を目にしたことがある人は多いであろうし、5万人の1人として体験したことのある人もいるだろう。

その上で、このように考えてみていただきたい。

ルネサンス期のフィレンツェの人口とほぼ同じである、と。

フィレンツェルネサンストップランナーを走った都市であるが、ルネサンス期にいきなり誕生した都市ではなく、都市としての歴史は紀元前まで遡ることができる。それこそ、ローマのロムルスとレムスより古くまで遡ることができる。

しかし、古代ローマ時代のフィレンツェイタリア半島の年の内の一つでしかなく、これといって特色のある都市ではなかった。中世カトリック社会におけるフィレンツェも近隣の都市であるピサの影に隠れた都市であった。

この都市が、ルネサンス期にカトリック社会のトップランナーに躍り出た。それも5万人程度の人口の都市が、その時代カトリック社会における最高の文化を醸造し、メディチ家のもとで発展を迎えたのだ。ダンテ・アリギエーリ、レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロ、サンドロ・ボッティチェリなど、多くの偉大な人物を輩出したことは世界史の教科書で知るところであろう。

本書は、フィレンツェの歴史的背景、芸術の黄金時代、宗教改革、政治的な変遷などについて詳細に説明している一冊であり、また、フィレンツェの美術館、教会、広場などの観光スポットについても触れている。フィレンツェを学びたい人だけでなく、観光に行こうとしている人にとっても有用な一冊となるはずである。