何かを成し遂げて欲しいときは、自分で計画するのもありだが、ものすごい賞金を用意して挑戦者を募るのも一つの手。不可能とされてた大西洋無着陸横断飛行をリンドバーグが成功した理由はそれである。
リンドバーグが手にした賞金は2万5000ドル。現在の日本円で考えるとおよそ5000万円。これはリンドバーグの挑戦に対して支払われた額ではなく、最初に大西洋無着陸横断飛行に成功した人であれば誰もが手にできる可能性のあった賞金だ。
大西洋を飛行機で一気に飛べることが証明されるとそれはビジネスとして成立することを意味した。
現在、航空産業は30兆円の市場となっている。これがもし「タダで大西洋飛んでくれないか?」 なんて言ってたら、いまの航空産業は、無い。
本書は積極的な楽観主義を感じさせる起業家の宣言であり、冒頭に記したリンドバーグの逸話は本書にある事例の一つである。
大きな目標、さらには大胆極まりない目標、いわゆるムーン・ショットを掲げることは小さな目標よりも結果を出す。個人の価値観と目標が大局的に一致さすることで、かかわる全ての人に最適な動機づけを獲得することが可能となる。
ここに最新のテクノロジーが加わる。かつてはごく一部の人でなければできなかったことが、現在のテクノロジーが解決することは珍しくなくなる。少し前であれば妄想と受け止められそうなムーンショットも非現実的な話ではなくなる。
ただし、ここに注意点がある。
テクノロジーに関する最新情報は遮断されているものではない。情報に接しないのは自由であるが、情報に接することが許されないという状況は、無い。技術が谷を抜けて啓蒙曲線上で上昇し始めるタイミングを認識すれば大チャンスとなるが、その認識を逃してしまった場合は周回遅れとなる。アンテナは拡げておかねばならない。
本書は、世界に大きな影響を与えたい起業家にとって、信じられないほどの洞察と実践的なゲームプランで満ちた、インスピレーションに満ちた読書であると言える。大胆さを受け入れる準備ができているならばこの本は必読と言えよう。