「新しい出会い系サイトを作るぞ」
↓
「他にはない特色を持たせよう」
↓
「他のサイトは写真と文章だけか。動画も載せられたらすごくない?」
↓
『この動画を載せてるサイトおもしれぇな』
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『出会いはともかく動画を載せれるってすげえ』
↓
『むしろ動画がメインだろ』
↓
『これ、動画のサイトだろ』
のちのYouTubeである。
本書は、MITメディアラボの所長である伊藤穰一氏と、ワイアード誌のジャーナリストであるジェフ・ハウ氏が共著した、現代社会におけるイノベーションとビジネスのマニュアルである。
伊藤氏とハウ氏は、めまぐるしく変化する世界に適応するために必要な「9つの原理(ナイン・プリンシプルズ)」、すなわち、
・権威より創発
・プッシュよりプル
・地図よりコンパス
・安全よりリスク
・従うより不服従
・理論より実践
・強さよりレジリエンス
・計画よりシナリオ
・専門家よりアマチュア
を提唱している。
これらの原理は、トップダウンではなくボトムアップのアプローチを重視し、既存の枠組みや常識にとらわれず、柔軟で創造的な思考と行動を促している。本書では、これらの原理を具体的な事例や理論で裏付けながら、読者に分かりやすく説明しており、冒頭に挙げた YouTube はその一例である。
本書の長所として、著者たちが自らの経験や知見を豊富に盛り込んでいることが挙げられる。伊藤氏は、MITメディアラボの所長として、世界最先端の研究やプロジェクトに携わると同時に、ベンチャーキャピタリストや起業家としても活躍しており、Flickr や Kickstarter などのサービスに投資したことでも知られている。また、ハウ氏は、クラウドソーシングという言葉を生み出したジャーナリストであり、インターネットやテクノロジーに関する多くの記事や書籍を執筆している。こうした自らが「9つの原理」を実践してきた人物であり、その信憑性や説得力は高いと言えよう。