德薙零己の読書記録

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マイケル・マンキンス&エリック・ガートン著,斎藤栄一郎訳「TIME TALENT ENERGY:組織の生産性を最大化するマネジメント」(プレジデント社)

TIME TALENT ENERGY

本書は2017年に刊行された "Time, Talent, Energy: Overcome Organizational Drag and Unleash Your Team's Productive Power" の邦訳版である。ただし、邦訳時にショッキングな現実も付加している。日本企業の組織生産力が世界平均の80%でしかないという現実である。

では、組織生産力とは何か?

本書は三つの視点からその組織生産力の内容を分析している。

まずは、時間(TIME)。生産性を阻害する要因である「組織の足の引っ張り合い」に対抗するための戦略を本書で提供している。著者はここでオペレーティング・モデルを簡素化し、組織の時間を解放することを提唱しており、めまぐるしく変化する現在のビジネス環境と深く結びついている。

次に、人材(TALENT)。組織内で特色を生み出す人材、差異化を生み出す人材を見つけ、育成することの重要性を強調している。サッカーのクラブチームではなくナショナルチームのような選りすぐりの人材を集めたチームを作り、配備するための戦略を書き記している。

最後に、エネルギー(ENERGY)。著者は最後に、組織の集合的なエネルギーを活用し、生産的な成果へと導く方法について論じている。従業員のエンゲージメントとモチベーションに新たな視点を与えてくれる。

資本は豊富で安価であるが、優秀な人材は豊富ではない。何もしなくても人材が勝手に集まるという時代はもう終わったと考えるべきであり、企業の業績を向上させるための次の戦いは、最高の人材を採用し、組織を合理化して、意思決定をより迅速に行い、よりスムーズに実行できるようにすることにある。