一流とされる大学を卒業したはずなのに、信じられない愚かな失敗をする人がいる。民主党恐慌の3年4ヶ月を経験した日本人は、それなりに優秀とされる人なのにどうしてここまで愚かな失敗だけをわざわざ選んで繰り返したのか全く理解できないことを思い出せるであろう。
あるいは、戦前の陸軍士官学校や海軍兵学校は文武両道の人員選抜を繰り広げ、ごく一部の者しか無事に卒業することができなかった超エリート校であったが、その面々を集めた組織である軍部があそこまで愚かな失敗を繰り返したことは、日本国の歴史において無視できぬ話である。
本書はその答えを示している。すなわち、優秀で高い教育を受けたエリートとされる人であるほど陥ることの多い知性の罠を解説し、好奇心、内省、心の広さ、知的謙虚さ、成長志向といった後天的に身につけられる思考法によって本当の賢さを伸ばす方法を紹介しているのである。
そして、残酷な現実を突きつける。
IQの高さが優れた思考力や判断力とは無関係であるということだ。その上で、実社会で求められる知性というのは、エリートを自負する人が陥りがちな「愚かな思考」ではなく、IQの上下に関係しない6つのポイント、すなわち、
- 直感を疑う
- 知的な謙虚さを持つ
- 異なる視点を探索する
- 好奇心を持つ
- 内省する
- マインドセット
についても触れている。その上で社会への貢献を考えると、
6つのポイント | |||
身につけている | 身につけていない | ||
自分をエリートと | 考えている | 社会に大きく貢献。 | 社会の害悪。 |
考えていない | 社会に役立つことはある。 |
となる。この「社会の害悪」が問題なのだ。
これは自分をエリートだと自負している人達にとって認めたくない事実であろう。だが、これは現実なのだ。