明治時代前半の小学校の卒業式は残酷である。
明治時代前半、小学校の卒業式は学年の終わりにあり、卒業式は進級試験とセットになっていた。進級試験を終えるとそのまま卒業式に突入するのである。今で言うと期末テストと終業式が同日にあるようなもので、それが卒業式であった。
なお、現在の期末テストや終業式は自分が通っている学校で行うものだが、同時は、近隣の複数の学校に通う児童が一箇所に集まってテストをし、式を迎えていた。
進級試験を終えた児童はそのまま卒業式に参加する。
式では、一人一人の名が呼ばれる。
名前を呼ばれた児童は進級証明書を手にして式から退出する。
ここで名前が呼ばれるのは無事に進級できる児童のみ。
留年が決まった児童は名前を呼ばれることなく取り残されたまま、卒業式が終わる。
卒業式で泣く児童は明治時代前半にもいた。しかし、その涙は、卒業することの寂しさからの涙では泣く、試験結果が良くなく、卒業=進級できないということを突きつけられたことへの涙である。
本書はこの残酷な卒業式から、現在の卒業式に至るまでの歴史を紡いでいく。