平安時代は奈良時代の後継としてはじまり鎌倉時代へと継承する。
何を今さらと思うかもしれないが、律令制が崩壊して摂関政治となり、院政を経て武家政権へと移行するという流れは、完全な移行ではない。
前時代に構築されたシステムを土台とした新時代のシステムを時代に合わせ構築した結果である。
平安時代末期には鎌倉時代が誕生していると同時に、鎌倉時代には平安時代が生きている。1185年も、1192年も、一つの時代から別の時代への移り変わりの起こった年ではない。
言うなれば「気づいたら変わっていた」である。
現在に生きる我々が平安貴族としてイメージする光景は一面的な物である。それが私利私欲にまみれているものであるという悪評を生み出そうと、実際には政治家としてこの国を動かし、その時代時代におけるベストを選び続けてきたのが平安時代の歴史であり、ベストを選び続けてきた末に迎えたのが鎌倉時代である。
本書は政治家としての貴族の側面を如実に生み出す一冊である。