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澄川龍一著「アニソン大全:「鉄腕アトム」から「鬼滅の刃」まで」(祥伝社)

アニソン大全 ーー「鉄腕アトム」から「鬼滅の刃」まで (単行本)

今から30年前、日本の産業は様々な分野で世界を席巻していた。家電も、自動車も、そして金融も、日本が世界のトップリーダーであった。

現在、その光景はない。ゼロではないが、乏しい。

しかし、この30年の間にさらなる発展を見せ、世界のトップランナーを走り続けている産業がある。

アニメ産業である。

日本が生み出すアニメーションは世界各地で放送され、あるいは配信され、テレビで、ネットで、さらには映画館で多くの視聴者を楽しませている。30年前の段階で既に日本のアニメーションは世界各地で広く受け入れられていたが、この30年でさらなる進展を見せてきたのだ。

そして、忘れてはならないことがある。実はテレビにおけるアニメーションの放送スタイルは、日本ではじめてのアニメのレギュラー放送である鉄腕アトムの時点で既に固まっていた。すなわち、毎週特定の曜日の特定の時間に30分間に亘って放送するというスタイルである。その週の番組スタート時にはこれから始まる番組がどのような番組であるか、その週の番組の終わり時にはどのような番組であったのか、たとえば、どのような原作に基づいているのか、どの製作会社が作成したか、どんなスタッフが制作に関わったかを紹介しなければならない。この紹介のテロップを流す際に音楽を用いるというスタイルは鉄腕アトムの段階で既に成立していたのである。

無論、時代の移り変わりによる違いはあり、番組終了からいったんCMを挟んだのちに曲を流すスタイルから、番組終了と同時に――あるいはシティーハンターのように番組終了から徐々に――音楽を流すスタイルへと変化するなどあったし、作品によっては番組の開始と終了の双方ではなくどちらか一方のみとする場合や、番組開始と同時に本編を始め、本編の途中で曲を流す場合などもあるが、それでも基本スタイルはかわらない。アニメには始めと終わりの二回、何かしら音楽、その多くは歌を流すものであるというスタイルが確立されている。そして、その曲はそのアニメ作品のための曲であり、既存の曲の流用はゼロではないがレアケースとするしかない。

つまり、新番組としてアニメ番組が始まる際には、新たに作品にリンクする曲も音楽市場に投入されることを意味する。かつてはアニメ番組のオープニングやエンディングの音楽であると言うことで一段低く見られ、レコード店での扱いも雑であり、どんなに売れても評価されることはなかった。それが時代経過とともに新たな楽曲発表用の舞台として認識されるようになり、作品人気とリンクすることで楽曲そのものが日本国内だけでなく世界へと羽ばたくこととなった。アニメーションに関連する楽曲を作ることが音楽の世界における成功の一つのルートとして確立されたのである。

本書はそのようなアニメーション関連の楽曲、いわゆるアニソンについて、その歴史を描写した一冊である。それは、単に懐かしさを感じるだけでなく、アニメーションにおける音楽の重要性とその歴史、そして、音楽ビジネスにおけるアニメーションの立ち位置といったビジネス的視点で捉えることができる一冊であることを意味する。