本書は新しい時代のリーダーシップとはどうあるべきかという姿を具体的に叙述し、これからの時代にリーダーとなる人に向けての行動指針をまとめた書籍である。
ただ、本書のトーンとしては、これまでにない新しい形のリーダー像の投影となっているが、歴史を学ぶ者であるならば、新鮮さよりもむしろ歴史において成功したリーダーがどのような人達であるかを改めて実感させられる一冊である。
資本主義の進展によって、利益優先、経済成長優先という環境が当たり前になり、従来のリーダーシップが消え、人として持ちうる能力がかき消されてきた。本書で挙げられている新しいリーダーシップは喪失した人としての能力を取り戻すことに主眼が置かれている。しかし、それは何も真新しいリーダー像ではない。むしろ、資本主義の勝者という扱いをされるリーダー像のほうが、歴史上何度も見られる瞬間最大風速的な人物である。突発的に現れ、一瞬だけ称賛されるもののただちに霧散する、そうした一時的なリーダーは歴史上何度も登場している。そうしたリーダーも歴史書に名を残しはするが、取り立てて重要視される人物ではない。歴史に名を残す人物とは、本書で取り上げられているような新しい形のリーダー像を具現化した人物なのだ。
近年の大河ドラマで言うと、今年の藤原道長、去年の徳川家康、一昨年の源頼朝などはまさに、本書で言うところの新しいリーダーシップを具現化した人物である。
リーダーシップを学ぶとき、歴史書はどのようなリーダーが過去に存在していたのかを知り、本書はリーダーシップを具体的に実践するにはどうすれば良いかを知ることとなる。