江戸時代の越後屋の勤務状況が、
- 12歳から22歳になるまで無給
- 休暇は年に2回
- 10年間勤め上げると給与を貰えるようになるが1年ごとの契約更新があり終身雇用ではない
- 30歳まで働けた者が10人に1人である
以上を踏まえると、「越後屋、お主も悪のよう」が別の意味になる。
上記は本書に掲載されているエピソードのうちの一つであるが、我が国の祖先の名誉のために記すと、江戸時代の越後屋のような極悪非道な労働条件しかなかったというわけではなく、現在と同等、ないしは、現在と比べるとむしろ羨ましいと感じる給与事情の人も数多くいた。
本書は日本人の給与事情の歴史をまとめた書籍である。当然ながら、明治時代に現在の日本円を制度として確立される前は日本円での給与などあるわけないし、それ以前に貨幣経済の確立される前は金銭でどれだけの給与があったのかなどわかりようがない。また、日本円での給与記録があったとしても物価は大きく違う。
本書はそれらの事情を踏まえて、当時の資料からどれだけの生活ができていたのかを調べ、それらを現在の貨幣価値に落とし込むことで当時の給与事情がわかるようになっている。
ただ、一点注意が存在する。本書は昭和63(1988)年に刊行された書籍であり、加筆修正した上で文庫版として刊行された一冊であるが、我が国はその間に失われた30年を体験してしまった。加筆修正での補完もあるとはいえ、基本的には失われた30年を迎える前の日本国の経済情勢を前提とした書籍である。