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里見脩著「言論統制というビジネス:新聞社史から消された「戦争」」(新潮選書)

言論統制というビジネス―新聞社史から消された「戦争」―(新潮選書)

マスメディアが「マスゴミ」と呼ばれるようになったのはいつからだろうか?

読者や視聴者から報道が信じられないという声が挙がる一方、メディアのほうからはネット言論に対する批判的な論調が挙がっている。中にはネット言論の規制を訴える論調まで存在する。恐ろしく危険なことだ。この国がかつてどのような言論統制をしていたのかを振り返り、その言論統制によってどれだけの利益を得ていたのかを思い返すだけで、言論規制を訴える論調そのものがいかに恐ろしいものであるかがあぶり出される。

本書は戦前戦中のメディアがいかに国策に便乗した論調を繰り広げていたかを明らかにする。それも、国からの圧力で言論規制をしたのではなく、自分達から率先して言論統制を掲げたのだ。それも、儲けるために。

現在のメディアの論調は、国に対する賛意と反発という違いだけはあるが、行動様式としては全く同じである。自分達の読者、すなわち特定の政治信条を持つ人に向けた論調を繰り広げ、その論調に反発する声に対して容赦なく弾圧する。反発に対して聞く耳を持たないだけではなく、相手の人権を剥奪してまで弾圧する。

ネット言論というのは、メディアの繰り広げる弾圧に対する反発であり、言論の自由の象徴でもある。内容について極めて大きな問題を包含していることはその通りであるが、一方で既存メディアには存在しない自浄作用も働いている。

規制を求める論調は、言論の自由を奪うという論調である。

まさにこの国がやらかしてきた失態と全く一緒である。

新聞紙しんぶんがみを売るために数百万人の人を殺してきた歴史を顧みることすらできない存在に、歴史を語る資格は、無い。