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中村聡一著「教養としてのギリシャ・ローマ:名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄」(東洋経済新報社)

教養としてのギリシャ・ローマ―名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄

本書を読む前の自分には驕りがあった。文学部史学科西洋史専攻で西洋古代史ゼミに所属していた自分にとって既知の再確認となるであろうという驕りである。

今の自分にそのような概念は無い。驕りに満ちていた自分への恥の感情だけである。

たしかに本書に記されている歴史的事実の一つ一つは既知のこととして身につけている。だが、こうして体系づけられた教養として、身につけておくべき一般常識として自らに構築されていたかという問いに対する回答は、否。

ギリシャの地でなぜ文明が生まれ、哲学が生まれ、なぜそれらが現在も受け継がれているのかという連綿への視点は私に欠落していた。

ヘロドトスの記した歴史的認識が現在の認識にどれだけ影響を及ぼしているか。

トゥキュディデスの記した民主主義の衰退は現在に何を残しているのか。

プラトンの掲げた理想とアリストテレスの掲げた現実は、今に生きる我々にどのような行動様式を呼び起こしているか。

そして、それらのギリシャ人の哲学や思想が派遣国家ローマにどのように浸透し、国家として成就し、いかなる歴史を刻んで、いかに滅び、その残滓が現在にいかに残っているか。

そしてなぜ、リベラルアーツを学ばねばならないのか。

本書は私のように西欧古代史を大学で専攻していた者に自らの無知を自覚させる一冊であると同時に、現在に生きる我々に、知っておかねばならない一般教養を据え付ける一冊である。