本書は中日新聞で連載していた「アニメ大国の肖像」をまとめた書籍である。「アニメ大国の肖像」は日本国におけるアニメーション製作に携わってきた方々へのインタビューであり、そこにはアニメーション作品作成時のリアルが語られている。
以下が本書の目次である。
- 豊田有恒×辻真先 ―― 茶の間でアトムが飛んだ
- 月岡貞夫 ―― “オリジナル”のテレビアニメ「狼少年ケン」
- 白川大作 ―― 初の少女向け「魔法使いサリー」を企画
- 須藤将三 ―― 虫プロ営業担当が見た、手塚治虫のアニメへの情熱
- 鈴木良武 ―― アニメ脚本家の地位向上を
- 杉井ギサブロー ―― 映像表現としてのアニメの可能性探り
- 鷺巣政安 ―― 利益と制作費の間で模索して
- 雪室俊一 ―― 「サザエさん」を書き続けられた秘訣
- おおすみ正秋 ―― 舞台で培った演出術をアニメでも
- 大塚康生 ―― アニメ職人がこだわる“リアリティー”
- 小田部羊一 ―― 描かれた世界の中でキャラクターを生き生きと
- 黒田昌郎 ―― 「世界名作劇場」の傑作群を演出
- 鈴木伸一 ―― トキワ荘のメンバーと「スタジオ・ゼロ」設立
- 熊倉一雄 ―― 「ゲゲゲの鬼太郎」主題歌も大ヒットした名優
- 山崎敬之 ―― 「巨人の星」から「アンパンマン」まで担当
- 出崎統―― 「止め画」という革新的演出術
- 九里一平 ―― 「タツノコプロ」を兄弟と設立
- 笹川ひろし ―― タツノコアニメはSFもギャグも
- 鳥海尽三 ―― タツノコのストーリーとアイデアを支える
- 藤川桂介 ―― 「マジンガーZ」「宇宙戦艦ヤマト」の脚本家
- 中村光毅 ―― 美術監督として数多の名作を
- 大河原邦男 ―― メカニックデザイナーの草分け
- 富野由悠季 ―― 「機動戦士ガンダム」の挑戦
- 山浦栄二 ―― リアルロボットもので熱狂を生む「サンライズ」を創業
- 安彦良和×辻真先 ―― ロボットアニメとは何か
- 松崎健一―― SFマニア視点で、設定に奥行きを
- 高橋良輔 ―― 演出経験が「装甲騎兵ボトムズ」に結実
- 石黒昇 ―― 「アートランド」を設立し、若い才能を輩出
- 田代敦巳 ―― 音響監督として名作を彩る
- 芝山努 ―― 「ど根性ガエル」「ドラえもん」の美しい絵コンテ
- 岡崎稔 ―― 鳥山明原作アニメが世界的な大ヒット
- 香西隆男 ―― 苦労しながら歩んだアニメーター人生
- 湯山邦彦 ―― 「ポケットモンスター」はゲームから世界的アニメに
- 原恵一 ―― 「クレヨンしんちゃん」の演出からオリジナルアニメ監督へ
- 辻真先 ―― 脚本家よ、未知の領域へ踏み出せ
見聞きしたことのある方や名前は存じ上げなくても作品は知っているという方の名が挙がっている。それらの作品がどのようにできたか、特に、その時代ならではの制約の中でどのように作品を世に送り出してきたかという視点で、本書に記されている内容は、栄華の裏に隠された苦悩である。
そして、現在のアニメーション製作事情も称賛されうるものではない。そこには何かしらの構造的問題が存在する。その構造的問題を歴史に求めると、先人達の苦悩に行き当たる。そして、現在進行形で解決しようと藻掻き苦しむ情景も見えてくる。