2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵略を始め、3月にはもう世界の多くの国でロシアに対して経済制裁をスタートさせた。
さて、この経済制裁であるが、ロシアのように資源もあり工業力もある国に対して実施する意味はあるのだろうか? 経済制裁を喰らっても気にすることなくロシアは侵略戦争を継続できると考える人はいるではないだろうか?
結論から言うと、意味はある。いや、経済制裁をしないことのほうが戦争に協力することになることを意味し、経済制裁をしてようやく、戦争しないという意思表示になるのだ。
さて、本書は現在進行形で侵略を繰り広げているロシア軍ではなく、今から80年前の日本陸軍について陸軍経理部の視点から実態を描いた一冊である。そして、経済的に破綻してしまったら、いかなる軍隊であろうと行動できなくなることを指し示した一冊である。
戦時中の日本陸軍の内部事情を経理の観点から挙げると、予算の決定、兵器の調達、兵士たちの食生活、酒への執念といった側面が見えてくる。特に、兵士たちの食生活や酒に対する執念は、精神論や根性でどうこうなるモノではなく、頭を悩ませる問題である。その悩みに直面し続けていたのが陸軍経理部員である。
カネ勘定のせいで戦争できないとはどういうことだと怒りを隠せない上層部は数多くいたが、どうにもならない話であった。国民に負担を強い、国債購入や強制的な貯金のキャンペーンを繰り広げるものの、限界はとっくに超えていた。
そしてそれは日本陸軍だけの話ではない。軍隊はタダでは動けないのだ。そして、多くの国がロシアに対する経済制裁を続けるのは、ロシア軍を動かせないようにするためなのだ。
自給自足を達成しているように見えるロシアでも限界はある。その一刻も早い限界を成就させることで戦争を終わらせるのが経済制裁である。経済制裁をすることで戦争に荷担するのではなく、経済制裁をしないことが戦争に協力することになるのだ。