長屋王、以仁王、忠成王など、歴史上何人も「親王」ではなく「王」と資料上に名が残されている皇族がいる。なぜ親王とならなかったのか、なぜ王と呼ばれ皇室とどのような関わりを持ち、社会においてどのような役割を背負ってきたのかを記す一冊である。
あまり詳しく書くとネタバレになるが、ここで一つ、本作に関わるトリビア。
「正親町」と書いて「おうぎまち」と読む。つまり、「正親」=「おうぎ」なのだが、その語源は「王」=「おほきみ」。
これは重要なポイントである。
そもそも日本の天皇は皇帝である。王ではない。かといって、日本国の歴史に王がいなかったわけではない。ただ、王の権威はそこまで高くないのだ。皇族として生まれた者は、皇位に就いた者、皇位に就く資格を持つ親王、皇位に就く資格を有さない王の三段階に分かれている。その下に我々庶民が位置するという構図であるのが日本国であり、皇族の一員としてある程度の敬意の払われることの多かった親王と違い、敬意が薄く、臣籍降下を余儀なくされることの多かった王たちは、それぞれが流転の人生を余儀なくされてきた。
臣籍降下でも王は親王より一段下に見られていた。平安時代以降に限ることとなるが、親王の臣籍降下は源を新たな姓として賜ったのに対し、王の臣籍降下は平が新たな姓として下賜されたのもその一例であるが、その他にどのようなものがあったのか、それは本書を御覧戴きたい。